食物繊維は、便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。
現在ではほとんどの日本人に不足している食品成分ですので、積極的に摂取することが勧められていますね。
そもそも食物繊維とは?

便秘解消に食物繊維って常識ですが、実は食物繊維は栄養素でもなんでもありません。
食物繊維は、消化・吸収されないため、エネルギーにならず、体を構成する成分でもないため、人の三大栄養素にも五大栄養素にも入っていないのです。
かつては食物繊維は、ただの「カス」と捉えられていました。というのも、唯一、私たちが消化・吸収できない栄養素だからです。
しかし近年、腸の中でさまざまな働きをし、多くの病気の予防に役立つことがわかってきたことから、人には欠かすことのできない「第6の栄養素」として注目されています。
食物繊維の定義 = 「人の消化酵素で消化されない食物中の難消化性成分の総体」
食物繊維というと「繊維」という言葉から、細い糸のような、スジ状のものをイメージされがちです。
しかし「ネバネバ」するものから、水に溶けて「サラサラ」した状態のものまで、多くの種類があります。
実は、特定保健用食品で「おなかの調子を整える食品」として認められている成分の多くが食物繊維です。食物繊維は、水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維に分けられ、それぞれ体の中で働きが異なります。
また、食物繊維の豊富な食材は、エネルギー摂取を抑えつつ食事のボリュームを増やせるというメリットもあります。
不溶性食物繊維の特徴
- 水分を吸収し便のかさを増やす
- 排便をスムーズにする
- 有害物質を吸着して排出する
(穀類、野菜、豆類、きのこ類など)
水溶性食物繊維の特徴
- 善玉菌の餌になる
- コレステロールの吸収を抑えて排泄を促す
- 血糖値の急上昇を防ぎ、糖尿病を予防する
- ナトリウムの排出を促す
(こんぶ、わかめ、こんにゃく、果物、里芋など)
食物繊維は、主に植物性食品に多く含まれ、メインのおかずとなる肉や魚介、卵にはほとんど含まれないため、副菜などで積極的に摂取するようにしましょう。
食事を食べる速さが早い人は、食事のメニューに食物繊維の量が少なく、遅い人ほど多いということも言われています。

早食いは肥満のもと!!
食物繊維の主な働き
- 正常な排便を促す
- 血糖氏の上昇をゆるやかにする
- コレステロールの吸収を抑制する
日本人は摂取量が減少傾向にある


日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年頃には一人あたり一日20gを超えていましたが、穀類・いも類・豆類の摂取量の減少に伴い、減少傾向にあります。欧米の食生活への変化もありますね。
最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり15g前後と推定されています。
厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、
一日あたり(18~64歳)の「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量)が設定されています。
食物繊維摂取目標量/1日あたり
・男性 21g以上
・女性 18g以上
食物繊維は、体に絶対的に必要な栄養素ではありませんが、体の健康に深く関与する食品成分です。
平均摂取量と目標量の差を見て明らかなように、食物繊維の積極的な摂取が必要です。
さらに、一日あたり24g以上の摂取で、心筋梗塞、脳卒中、2型糖尿病、乳がん、胃がん、大腸がんなどの発症リスク低下が観察されるとの研究報告が欧米で発表されています。食物繊維をたくさん摂っても問題はありません。むしろ摂れば取るほど健康に良いともされています。(Stroke.2013;44:1360-8)
ちなみに、アメリカ食品医薬品局(FDA)では、成人男性で1日38g、成人女性で29gを推奨していますが、実際の平均摂取量は日本もアメリカも約15gほどです。日本の方が実現性が高そうです。
体のサインから見た食物繊維の必要量は「一日に一回、規則的に排便がある」ことがひとつの目安になります。この状態である人の排便量は、一日に約150gであることがわかっています。
まずは、この便量を作り出すための食物繊維を食事から摂れているかがポイントです。
食物繊維のパワーとは?


コレステロール値を下げる
食物繊維は小腸で脂質を消化吸収する際に、胆汁酸を絡めて外へ出す作用を発揮します。
胆汁酸が不足すると肝臓で血中のコレステロールが分解され、再び胆汁酸を生成します。そのためコレステロール値が下がっていくのです。ポイントは、血中に含まれる悪玉コレステロールが下がり、善玉コレステロールは減ることはないことです。
便秘を解消し、快便に
便秘になってしまうと腸の中に毒素が溜まってしまい身体にとっても悪影響です。なので食物繊維をしっかり摂ることが重要なのです。
腸内細菌は、だいたい1週間くらいでその様相を変えていきます。意識して食物繊維を毎日摂るようになると、1週間過ぎた頃に「なんとなく腸の調子がいい」と気づくようになると言われています。さらに2週間経つと、便通などがしっかり改善されていきます。
食後の血糖値上昇をゆるやかに
血糖値を下げるためには、食物繊維が糖質を包んでゆっくり吸収する働きが重要になります。それによって、血糖値が上がるのを緩やかにします。
食物繊維を摂取する際には、食べる順番にも注目しましょう。
基本は、「野菜から食べること(ベジファースト)」です。食物繊維の多いものを先に摂ると、脂質や糖質の吸収がゆっくりになる効果があります。具体的には、レタスなどの生野菜よりも、食物繊維が多い根菜類や海藻などを先に食べる方が有効です。
高血圧を予防
血圧が上がれば、腎臓への負担が増え、さらに腎臓の機能が低下するという悪循環に陥ります。腎臓を守るためにも、血圧のコントロールはとても重要なのです。さらに腎臓の機能がうまく働かなくなるのは、腸内細菌も関係していることが、最近の研究結果として分かってきました。
つまり食物繊維をしっかり摂ると、血圧が正常になるのです。腸内細菌がつくる「D-アミノ酸」が、腎臓を保護する働きをして、さらに血圧コントロールに役立ちます。
効率の良い食べ方は?


食物繊維は、魚介類や肉類などの動物性食品にはほとんど含まれず、植物性食品に多く含まれます。
外食が続いたり、無理なダイエット食事量が減ったりすると不足しやすくなります。適量の食物繊維は腹持ちをよくするので、ダイエットにもうまく活用したいものです。
積極的に摂るには、主食を白米より胚芽米や玄米、麦、パンならライ麦や全粒小麦パンなど、なるべく精白されていないものにするのが良いでしょう。
また、豆類、野菜類、果実類、きのこ類、藻類などにも多く含まれています。
食品別で見てみましょう。
そば しらたき さつまいも 切り干し大根
かぼちゃ ごぼう たけのこ ブロッコリー
モロヘイヤ 糸引き納豆 いんげん豆 あずき
おから しいたけ ひじき
これらの食品は、1食あたり摂取する量の中に食物繊維が2~3gも含まれています。効率的に食物繊維をとるには、これらの食材を毎日の食事の中に上手に取り入れると良いでしょう。
食物繊維は現在、多くの日本人が不足気味です。まずは一日あたりプラス3~4gを目標に摂取がすすめられる量となります。
腸内細菌の研究が進んだことにより、食物繊維の認識が大きく変わってきました。
腸内環境を整えることは、大腸の問題に限りません。
全身の健康を守るために、食物繊維を摂取する生活を意識していきましょう。
【参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト】
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