健やかな眠りこそが健康生活への道

健康生活を送るためには「良い睡眠を取ることが必要だ!」ということは、皆さんもなんとなく思っていることだと思います。
良い睡眠とは何なのでしょうか?私たちは人生の3分の1を眠って過ごします。最も身近な生活習慣である睡眠にもっと目を向けていきたいと思います。

目次

眠りにはリズムがある

私たちは毎日ほぼ同じ時刻に眠り、同じ時刻に目が覚めます。
このような規則正しい睡眠リズムは、疲労による「睡眠欲求」と体内時計に指示された「覚醒力」のバランスで形作られています。

睡眠欲求

睡眠欲求は目覚めている時間が長いほど強くなります。いったん眠りに入ると睡眠欲求は急速に減少し、その人にとって十分な時間だけたっぷりと眠ると睡眠欲求は消失して私たちは覚醒します。

覚醒力

覚醒力は体内時計から発信され、一日の決まった時刻に増大し、睡眠欲求に打ち勝ってヒトを目覚めさせます。普段の就床時刻の数時間前に最も覚醒力が強くなり、その後メラトニンが分泌される頃(就床時刻の1-2時間前)に急速に覚醒力が低下します。

睡眠は決して「脳全体が一様に休んでいる状態」ではありません。眠っている間にも脳活動はさまざまに変化します。

ヒトの睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠(REM sleep)という質的に異なるふたつの睡眠状態で構成されています。

レム睡眠は、眠っているときに眼球が素早く動く(英語でRapid Eye Movement)ことから名づけられました。
ノンレム睡眠では脳波活動が低下し、睡眠の深さにしたがってさらに4段階にも分けられるのです。

  • レム睡眠   全身の筋肉が弛緩し、エネルギーを節約して身体を休める睡眠
  • ノンレム睡眠 昼間に酷使した大脳皮質を睡眠前半で集中的に冷却し休養を取らせる睡眠

ちなみにレム睡眠時の脳波活動は比較的活発で夢をよく見るほか血圧や脈拍が変動することから、心身ともに覚醒への準備状態にある睡眠ともいえます。

このように睡眠にはサイクルがあり、夢を見る「レム睡眠」と大脳を休める「ノンレム睡眠」が約90分周期で変動し、朝の覚醒に向けて徐々に始動準備を整えるのです。

眠ることの効果とは?

日本人の睡眠時間は、平均6.5時間で過去20年間にわたり減少を続けていると言われています。
現代社会は、シフトワーク(交代勤務)の増加・通勤や受験勉強をこなすための短時間睡眠・夜型生活の増加など、睡眠や体内時計の変調を引き起こすさまざまな要因で溢れているのです。

睡眠問題は万病のもとです。

過酷な勤務条件による長距離ドライバーの居眠り運転や、睡眠時無呼吸症候群を患っている新幹線運転士の居眠りによる緊急停止事故などが問題になっています。

このような睡眠問題によって生じる経済・社会資本の損失は米国・日本ともに年間数兆円に上ると試算されています。

睡眠は休養に必須であるだけではなく、記憶・気分調節・免疫機能の増強など、さまざまな精神機能や身体機能に関連しているとされます。健やかな睡眠を保つことは活力ある日常生活を送るための基本であるといえましょう。

たかが眠りとあなどる事なかれです。

睡眠と生活の関係 各論

適切な睡眠時間とは?

適切な睡眠時間について「7~8時間確保する必要がある」とよく言われています。

しかし、それは全ての人に7〜8時間の睡眠が必要なのではなく、また7〜8時間睡眠を取れば必ず健康を維持できるというわけでもありません。

重要なことは、睡眠の長さではなく睡眠の質を高めることなのです。
質の高い睡眠を得るためには、少なくともその人にとって最適な睡眠時間を確保することが欠かせません。

中には、遺伝的に短時間睡眠の遺伝子変異を持つ人も存在します。これらの人々は、生体リズムに関係する時計遺伝子に変異をもっているため、短時間睡眠でも平気です。
それ以外の人が短時間睡眠を続けると、寝不足状態になり、脳にも身体にもダメージが生じ、寿命が縮まってしまいます。

また、睡眠が少ない人は、肥満や糖尿病になりやすいこともわかっています。さらに、交感神経が緊張するため高血圧になり、精神疾患や認知症の発症率が上がることもあるのです。

睡眠時間と糖尿病

糖尿病患者ではないアメリカの成人1559人を対象に、「睡眠時間」と「血糖値が上がるリスク」の関係を調査した研究があります。
結果はこちらです。

2日間の睡眠時間の合計が11時間以下の人は、明らかに血糖値が上がるリスクが上昇する

睡眠時間が少ない傾向の人に「耐糖能異常」が認められたのです。
どんなに健康な若者であっても、睡眠の質が低下すると、糖代謝に異常をきたしてしまうことが示唆されています。(Tasali E ほか.Proc Natl Acad Sci USA 2008)

このように睡眠不足の状態が続くと健康に重大な悪影響を及ぼします。しかし、睡眠時間が長ければ良いというわけではありません。

睡眠時間が長いのは大丈夫?

アメリカの調査では、睡眠時間が7時間の人が最も長寿で死亡率が低く、8時間を超えている人は死亡リスクが上昇するというような結果が出ています。なので、適切な睡眠時間の確保と共に質の高い睡眠を取る必要があるのです。

また加齢とともに、長時間眠れなくなったという人も多いと思います。それは、加齢によって血圧・体温・ホルモン分泌など、睡眠を支える多くの生態機能リズムが変化し、体内時計に微妙なズレ生じてくるからです。

また睡眠には「メラトニン」という神経伝達物質が深く関与しています。体内時計ホルモンであるメラトニンが分泌されることにより、入眠を促すのです。

メラトニンの合成には、葉酸や鉄、ビタミンB群などの栄養素が必要であり、これらの栄養素が不足している人は、睡眠の質が悪くなると言われております。

他にも多数の生体機能が協調しあいながら、質の高い眠りのために作用するのです。
食生活を改善したり、サプリメントで不足している栄養素を補充したりすることによって、睡眠の質を高めるようにしましょう。

まずは、7時間を目標に睡眠時間の確保を心がけしつつ、生活スタイルに合わせて個別に調整するのが現実的です。自分自身の最適な睡眠時間を知り、睡眠の質も上げていきましょう。

ショートスリーパーの人は寿命が短い?

睡眠時間が短い「ショートスリーパー」は、寿命が短いと言われることがあります。
しかし、全てのショートスリーパーが短命なわけではありません。

ショートスリーパーでも問題なく生活できる人もいます。
それは、その人が持つ遺伝子変異に関係することがわかっているのです。

必要睡眠時間人口比
ショートスリーパー5時間以下1%未満
6時間以下5〜10%未満
バリュアブルスリーパー6〜9時間80〜90%
ロングスリーパー9時間以上5〜10%
10時間以上成人では1%未満 小児では大部分

このようにショートスリーパーに該当するの割合は、非常に少ないのです。
普通の人が短時間睡眠を続けると、睡眠不足状態が続き、脳にも体にもダメージが生じてしまいます。
もし短時間睡眠で不眠が気になる方は、専門家に相談しつつ、食生活の改善やサプリメント等で栄養状態の改善もすることも心がけましょう。

【参考:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト】

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